転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


206 呪文の文字記号ってカタカナみたいなんだね



 今日はお母さんがお出かけしてるから、パンケーキ屋さんはお休みしてお家でお勉強。

 でも、魔法陣に使う記号を書く練習は紙が無いし、羊皮紙は高いからできないんだよね。

 だから呪文を書くのに使う文字記号のお勉強をしてるんだ。


 これって魔法陣に使う記号と違ってどうやら普通に文字を書くのとおんなじで、ちゃんとその呪文だって読めれば発動するみたいなんだよね。

 だってバーリマンさんも他の所はきっちりした線で記号を書いてるのに、この文字記号だけはまるで自分の名前を書いてるみたいにさらさらって書いてたもん。

 って事は僕が帝国文字を覚えた時とおんなじように、それぞれの文字を覚えたらいいって思ったんだ。

 と言う訳で、僕は文字記号が書いてある方の教科書を開いてお勉強してたんだけど……

「これって、ホントにカタカナみたいだ」

 呪文を書くのに使う文字記号が思ってる以上にカタカナぽかったもんだから、僕はびっくりしたんだ。

 あっ、別に文字記号の形がカタカナに近いわけじゃないよ。

 でもね、音を伸ばす記号が「ー」だったり、”ァ”とか”ッ”なんかを現す文字を書く時もおんなじように同じ音の文字記号を小さく書くんだもん。

 おまけに”ガ”とか”パ”みたいににごる音の時も元の文字記号の右斜め上に小さな記号を付けるんだよ?

 この世界の呪文ってみんな元の世界の英語って言葉が元になってるんだから、酢考えるとこれはどう考えてもカタカナだよね。

「でも、これなら僕、凄く簡単に覚えられそう」

 流石に今すぐには無理だけど、一度この文字記号を前世のあいうえお順にさえ並べ替えた表さえ作っちゃえば、かなり早く覚えられそうだって思ったんだ。


 と言う訳で僕は早速その表を作ろうと思って、大きな板を造りに資材置き場に行こうと思ったんだけど、

「ただいま」

 そこにお母さんが帰って来たんだ。

「お母さん、お帰り。どこ行ってたの?」

「ルディーン、ちょっと待ってね。司祭様、こちらへどうぞ」

「うむ。邪魔するぞ」

 だから何してたの? って聞いたんだけど、そしたらその後ろからお爺さん司祭様が出てきて僕、びっくりしちゃった。

 でも、お爺さん司祭様が来たって事はお母さんと大事なお話があるって事だよね?

 そう思った僕は、邪魔しちゃダメだからってそのまま資材置き場に行こうって思ったんだけど、そしたらでてっちゃダメって言われちゃったんだ。

「なんで? お爺さん司祭様とお話するなら、僕がいると邪魔でしょ?」

「いいえ。今日司祭様がうちに来たのは、ルディーンに聞きたい事があるかららしいわ」

 僕に?

 お母さんにそう言われた僕はお爺さん司祭様の方を見たんだけど、そしたらにっこり笑いながら頷いてたんだよね。

 そっか。僕に御用時なら出てっちゃダメだよね。

 と言う訳で、僕はそのままお母さんとお爺さん司祭様と一緒に、いっつもみんなでご飯を食べてるテーブルに座ったんだ。


「司祭様。僕にご用時ってなんですか?」

「うむ。君はなにやら揺れない馬車を求めているそうじゃな」

 今日お母さんがお家にいなかったのは、昨日の晩御飯の時に僕が話してた馬車でお尻が痛くならない方法をお爺さん司祭様が知ってるかなぁ? って聞きに言ってくれたからなんだって。

 でね、その話を聞いたお爺さん司祭様が、もしかしたら作れるかもしれないからって僕に話を聞きにきたそうなんだ。

 これって凄い事だよね。

 だって司祭様だもん! 僕たちなんかよりず〜っと頭がいいんだから、手伝ってもらえたら絶対にお尻が痛くならない馬車ができちゃうはずだもん。

 そう思った僕はニコニコしながら、お爺さん司祭様に聞かれた事にちゃんと答える事にしたんだ。

「まずこれが一番大事なのだが、ルディーン君の使うフロートボードはどれくらいの重さの物まで載せる事ができるのかな?」

「重さ? えっとね、どれくらいかは解んないけど、資材置き場にある僕が作った四角い石は載ったよ」

 あれより重い物は資材置き場に無かったから、僕の魔法がどれくらいまで乗せられるかなんて解んないんだよね。

 でもそれが一番大事だって言う事は、もしかすると石が載っかる程度じゃダメなのかも。

「ふむ。カールフェルト夫人、ルディーン君の言う石がどれくらいの重さがあるのか解るかのう?」

「いえ。ハンスでも持ち上げるのは無理だという事は解りますが、どれくらいの重さかと正直聞かれると解りません」

「そうか。では一度その石とやらを見に行くとするか」

 お爺さん司祭様は僕が作った石の大きさを見てみないとお尻が痛くならない馬車が作れるか解らないって言うんだ。

 だから僕たちはお家を出て、みんなで資材置き場に移動したんだ。


「なんと。これを載せる事ができると申すか?」

「うん、載っかるよ。じゃあ、やってみせるね」

 僕が作ったおっきな石を見たお爺さん司祭様が、これがホントに載っかるの? って聞いたもんだから、僕は魔力を循環させて目の前の石の下にフロートボードを出してみたんだ。

 そしたらこないだとおんなじで、ちゃんと浮いたんだよね。

「うっ、うむ。確かに浮いておる」

 でね、お爺さん司祭様はその石を押したり引っ張ったりして、ちゃんと動かせるかどうか調べたんだ。

「ねぇ、司祭様。これくらいの重さの石が持ち上がったらお尻が痛く無い馬車、作れると思う?」

「大貴族が乗る箱馬車でもこれ程の重さは無いからのぉ。作れるか作れ無いかと言えば、間違いなく作れるな」

「ホント? やったぁ!」

 さっき僕が作った石を見ないとダメって言われたから、もしかしたら作れないかもって思ってたんだよね。

 でも、お爺さん司祭様がこう言うんなら絶対大丈夫だよね。

「司祭様。私にはよく解らないのですが、ルディーンの魔法で本当に貴族様が乗られているような馬車を作る事ができるのでしょうか?」

「別に貴族が乗るような装飾過多の箱馬車を作るわけではあるまい? ならば容易く作れるだろう」

 その上、心配したお母さんがほんとに大丈夫? って聞いてもやっぱり大丈夫だって言ってくれたもんだから、僕は一安心。

 でもね、

「ですが、司祭様。それならば何故そのような難しい顔をしているのでしょうか?」

 お母さんがそんな司祭様にこう聞き返したんだ。

 だから僕は、慌ててお爺さん司祭様のほうをみたんだけど、そしたらホントに困ったような顔してたもんだからびっくり。

「ねぇ、司祭様。どうしてそんな顔してるの? やっぱりお尻が痛く無い馬車、作れないの?」

「あ〜そうではない。心配させてすまなかったが、見たところ君の魔法ならばわしが知っておる馬車を作る事は容易かろう。では何故わしがこの様な顔をしておったかと言うとな、それは思った以上におもいものを持ち上げる事ができておったからなんだよ」

 お爺さん司祭様が言うには、フロートボードってほんとはこんなに重いものを持ち上げられる魔法じゃないんだって。

 でもそれって変だよね。だってこの魔法、街の壁とかを作るときに使うと便利って書いてあったもん。

 そう思った僕がお爺さん司祭様に聞いてみると、

「それはのぉ、運ぶ石に重さを軽くする魔法や、その効果を発揮する魔道具を使って運ぶから、この石より大きな物でさえもフロートボードで動かせているのだ。しかし、君の場合はそのような軽減魔法は使っておらぬだろう? 正直これ程の物を動かせる魔法使いは帝国浩と言えど、そうは多くは無いだろうな」

 お爺さん司祭様は、ちょっとだけ髪の毛が伸びて来た自分の白い頭を撫でながら、そう言ったんだ。


 色々な設定を考えているせいか、この話は本編でしたっけ? ってなるんですよね。

 それで今回冒頭に書いた魔法の呪文記号が日本語と同じようなつくりであるという事も、てっきり過去に書いていると思い込んでいました。

 いやぁ、気が付いてよかった。危うくルディーン君が、何故か知らないはずの文字記号で呪文をいきなり魔法陣に書き込んでしまうところでしたよ。(汗)


207へ

衝動のページへ戻る